囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
もしかしたら、話題を振られる前から、私と先輩の会話内容に赤くなっていたのかもしれないと思うと申し訳ないなと思う。
「あ、いや……俺、そういうのはよく分かんなくて」
しどろもどろになって言う大崎くんに、心の中でごめんねと謝る。
こんなのセクハラだけど……先輩に立てつくなんて年功序列健在の社会ではやすやすとはできなくて。
だけど、赤くなって困った顔を浮かべていた大崎くんは、何かスイッチでも入ったかのように急に真面目な顔つきをしてこちらを見た。
「でも俺っ、昼間、深月さんの元彼さんが店頭来た時、イライラしました!」
「え」って声が重なる。もちろん、私と手塚先輩だ。
突然、会話を断ち切って宣言する大崎くんに、ポカンと口が開いてしまう。
「その後、手塚さんと深月さんが話してて、さっきの男の人が深月さんの元彼だって知った時もっ。
なんか、深月さんの事捨てたくせに平気で話しかけてくる元彼さんにイライラして……それから仕事になりませんでした!」
一応言っておくと、私は捨てられたわけじゃなくて、穏便に別れただけだ。
だけど今、そんな事はどうでもよくて……。
さっきまではざわざわしていたくせに、こんな時に限ってシンとしている部屋に、大崎くんのなんだかよく分からない宣言が響き渡る。
「俺、深月さんの元彼さん、嫌いっす! 深月さんを捨てて苦しめたくせに……」
「大崎くん、ちょっと飲みすぎたんじゃない? ちょっと顔でも洗ってこよう」
「ね!」と強く言っても「でもっ」とかなんとか言う大崎くんに「先輩命令」とコソっと睨みながら言うと。
不満そうな顔しながらも、素直に「……うすっ」と部屋を出ていくから、私もそれに続く。
まだ、シンとしたままの部屋。
立ちあがった時、ビール片手にニヤニヤした手塚先輩が「やばい。超楽しい」って言うから、「……でしょうね」とだけ言って部屋を後にした。