囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
トイレから出ると、既に大崎くんが待っていた。
言った通り顔を洗ったのか、Yシャツの襟元が濡れていて、まったく、と思う。
子どもじゃないんだからちゃんと拭けばいいのに。
部屋の中は賑やかさを取り戻したみたいで、ガヤガヤとした声が外まで漏れていた。
中には「仲人は支店長ですね」なんて声が聞こえてきてゾッとしたけれど、聞こえなかったふりをする事にする。
お酒の入った上での会話だし、本気にしても損するだけだ。
周りだって本気で言ってるわけじゃないんだろうし、そのうちに収まるだろう。
……しばらくは冷やかされるかもしれないけど。
「別に怒ってないから部屋戻っていいよ」
私を見たまま直立しているから言うと、大崎くんは「あ、いや……その……」と珍しくボソボソと言う。
どんなに落ち込んでても声のボリュームだけは、常に大のままなのにどうしたんだろう。
……まさか本気で酔ったのかな。
お酒慣れてなさそうだったから注意して見てはいたつもりだったけど……まだ配属されて二ヶ月だし他の人とも慣れてないせいで緊張とかもあるだろうし。
気持ち悪いとかだとしたら、ここじゃマズい。
だから、トイレに戻るように言おうと、大崎くんの近くまで行って「大丈夫?」と顔を覗き込むと。
大崎くんの顔が真っ赤になる。
ボンっ!って音でも聞こえてきそうなほどに蒸気するから驚いたけど、青くはなくて安心する。