囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「え? ああ、今笑ったのはニヤけたわけじゃなくて、なんか……ただ、びっくりしたなって思っただけ」
「ふーん。あいつ、深月的にどう?」
壁に寄りかかった及川が、ポケットに手を突っ込みながら聞く。
部屋の中からは相変わらずざわざわと声が聞こえていた。
「どうもこうも、後輩だし」
「後輩だって男だろ?」
「それはそうだけど……あの子、みっつも年下だよ」
そう笑うと、呆れたように笑った及川に「〝あの子〟」と、いつかもされた指摘をされ、少しむっとしながら口を開く。
「とにかく、後輩をそんな風には見れないでしょ」
「じゃあ、後輩じゃなかったら、男としてどんな感じ?」
質問を取り下げない及川に「やけに絡むね」と文句を言ってから、「んー」と唸ってちゃんと答える。
「悪い子じゃないとは思う。素直だし元気だし……ただちょっと頭が弱いけどね」
「へぇ。じゃあ、あいつが言う一人前になってもう一度告白してきたら付き合うんだ?」
ばちりと視線がぶつかって、思わず言葉を呑んだ。
探るように私を見る瞳に……またかと笑いそうになった。
私の中を覗いたところで、及川が困るようなものしか詰まってないのに……なんなんだろう。
そんなにあの夜の事を忘れたって言ったのが信じられないのだろうか。
覚えてるって言ったって……今も本当は好きだなんて言ったって、及川が困るだけなのに。