囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
こういうところ、優しいなぁと思う。
きっと、内心、〝深月とするとかやべー〟とか〝なんでよりによって……〟とか、そういう事思ってるハズなのに、そんな気持ちの端っこすら見せずに向けてくれる笑顔に、少し救われる。
さすがに、やべぇって顔されたら私だって傷つくから。
優しいと思うし……やっぱり好きだなぁと思い、胸がズクリと痛んだ。
「おはよ、深月。今何時?」
「おはよ。八時すぎたとこ。チェックアウトの時間分からないから、及川急ぎめで準備してもらっていい?」
「ん? おー。了解」
「これ、Yシャツ。あと、ズボンがそこで……あ、スーツとネクタイはちゃんとかかってるみたい」
脱ぎ捨てられてるズボンを見つけたあと、見当たらないスーツとネクタイを探して視線を泳がせていると、壁にかかっているハンガーにそれを見つけた。
見つけた……というよりは、見つけた〝ふり〟をしたっていう表現の方が正しい。
その〝見つけたふり〟を含めて、行動が怪しくならないように細心の注意を払った。
及川の洞察力の鋭い瞳に、これからつく嘘を見破られないように。
「これ、Yシャツね。あとは自分でとって」
Yシャツだけは、既に持っていただけにベッドに投げたけど、他のモノはわざわざ私が取るのもどうかと思ってやめておく。
及川が、図々しく見せる割に、他人との距離感を計ってる事を知っているだけに、あまり世話焼くのも嫌がるかなって思って。