囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「甘え上手の年下男性がマストだって」
「……そうですか」
含み笑いを浮かべる花岡さんにそれだけ言って、違うデスク掃除に移った私の後ろから、花岡さんが言う。
「そんなわけだし、大崎くんとは星座的に相性も抜群だと思うし付き合っちゃえばいいのに」
一体どんなわけなのか。
大体にして、いい加減掃除に戻らなくていいのか。
疑問に思いながらも振り向いて、呆れ笑いを浮かべた。
「入社してきてまだ一年も経たない子相手に、付き合えるわけないでしょ」
「えー。深月さんったら考え固いのね。お互い好きになっちゃったらそんなの関係ないんじゃない?」
「お互い好きになっちゃったらそうかもしれませんけどね」
「あら。じゃあ深月さんは大崎くんの気持ちに応えるつもりはないの?」
うっと言葉が詰まったのは、こんな公衆の面前で大崎くんを振るのに抵抗があったからだ。
大崎くんは、ちょっと頭が足りない部分はあるにしても悪い子じゃない。
あの告白だって、私への師弟関係っていうか、そういう気持ちが膨らんじゃって勢い余って……みたいな事だったのかなとも思うし、とにかく私を慕っての事だと思う。
初めてのコーチャーで、至らない点だってたくさんあるのに、そんな私に素直に〝はい!〟って返事をして、まるで犬みたいに懐いてくれている大崎くんを、こんな花岡さんのからかい半分の会話で傷つけるのは嫌だった。
いずれ断る時期がきたにしたって、きちんと大崎くんだけに向けた言葉でそうしたい。