囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「だから、まだまだ半人前の俺の気持ちなんかで、深月さんをからかうのは止めてください。すみません。お願いします」
そう頭を下げた大崎くんに、花岡さんは黙って……それから、「別にからかってたわけでもないけど」とバツが悪そうに言った。
オフィス内にいた職員のほとんどは、花岡さん側の意見を持って、というか、面白半分冷やかし半分で聞いていたんだろうけど。
そんな空気を一新させるような大崎くんの言葉に、各々が仕事に意識を戻したのが雰囲気で分かった。
オフィス内のカウンターの掃除やら、今日回ってきている処理の仕分けやら、資料の打ち出し作業やら。
色んな音がし出したオフィス内で、こちらに向けられる視線がふたつ。
ひとつは言わずもがな、好奇心に瞳をキラキラさせた手塚先輩で……これは、お昼休みを何がなんでもズラして取る事で対策するとして。
もうひとつの視線は……と、ゆっくりとそちらに目を向ける。
営業の席から私を見る形のいい瞳を見てから、目を伏せ私も開店準備に移る。
別に動揺する必要なんかない。
だって、及川とはなんでもないし、ただの同期だ。
私の気持ちは違うにしたって、及川はそうとしか思っていないんだから例え私が誰かと、それこそ大崎くんと付き合ったからといってなんでもない。
……それなのに。
なんでそんな目で見るの……。
あの夜からわずかに形を変えた関係が……以前よりも窮屈で苦しくて仕方ない。