囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
そんな事が朝からあったから、話しかけられるかな、とは思っていた。
でも、そう思う時点で私の考えすぎというか、自意識過剰なのかなとも思ったりして。
だから、あの瞳だってきっと特に意味はないんだろうし、朝の事だってからかうくらいはあるにしても、わざわざきちんと話題に出される事もないだろう。
……そう自分に言い聞かせて落ち着かせたっていうのに。
「だから、あんま放っておくとよくないって言ったのに」
午後の業務を終え、締めの作業も終えたあと。食堂の片付けをしていた時。
私しかいないハズだった食堂内から聞こえた声に肩が跳ねた。
職員が使った湯呑み茶碗やお箸を洗っていた手を止めて後ろを見れば、すぐ後ろに、壁に背中を預けて腕組みをしている及川がいて。
「驚かせないでよ」と、ひとつ文句を言ってから、洗い物に戻る。
「あんまり放っておくなって言ったって、金曜日の今日じゃ、三日しかないし。第一、あんな事朝一で聞いてくる方が悪いでしょ」
「まぁ、そりゃそうだけどな」
「そうだよ。〝甘え上手の年下男子〟」
朝、花岡さんが言わんとしていた事を告げると、及川も気付いていたようで、ははっと苦笑された。
「電気つければいいのに。いつも、この暗さでひとりならつけるだろ」
「なんとなく忘れてたの」
「おばけとか平気になったのかと思った」
「やめてよ。そういう話すると寄ってくるって言うでしょ」