囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
思わず笑みがこぼれたのは……なんでだか自分でも分からなかった。
でも、及川があの夜からやけに色々首を突っ込んでくるとか。
あの夜の事、及川にしたら消しちゃった方がいい過去なのに、やたらと言葉にしてくるとか。
あの夜……振った私相手に、なんであんな事したのかだとか。
及川の矛盾みたいなものが一緒くたに湧き上がって、あの夜からずっと考えてるのに理解できないそれらに、もういい加減にしてよとばかりに、気がついたら笑みがこぼれていた。
私の事、振ったくせに。
必死に言おうとした好きの言葉すら聞いてくれなかったくせに、なんでって。
最後の湯呑み茶碗を水切りの上に置いてから水を止めて手を拭く。
それから振り返って……及川をじっと見つめた。
薄暗い室内。及川の瞳も私を映していた。
「振るとか振らないとか、及川には関係ないでしょ」
突き放すような言葉を使ったのは初めてだったかもしれない。
だって、ずっと好きだった及川相手にそんな言葉使う理由がなかったから。
でも……無理だった。とめられなかった。
好きな人に……もう振られているのに好きな人に、こんな風に傍にいられて、恋愛の相談に乗ったり、恋愛に口出されたり……気にかけられたり。
そんなの、マゾじゃなきゃできない。
片想いしていた時よりも、告白を遮られた時よりも。今が一番つらくて苦しい。