囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
あれから及川とは特に話してはいない。
もう何年も同期やってきてるわけだから、あれくらいの事で気まずく思ったりもしないし、話そうとすれば普通に話せるとは思うけど……。
特に話す事もなかったし、及川も及川で仕事が忙しそうだったし。
月曜日の夜、一通だけメールが届いたから、それに返信したくらいだった。
〝もしかして怒らせた?〟ってメールに、〝え。怒ってないけど〟って。
及川からは〝ならいいんだけど〟ってきたから、そのまま返事はしていない。
実際、及川の矛盾してる言動をなんでだろうって疑問に思ったりはしても、だからって怒ってるわけじゃないし。
優しくされた時なんかは、振ったくせに、と思う事もあるけれど、でもそれは私の問題であって及川のせいじゃない。
「なんだ、進展ないんだ。最近……って言っても結構前からだけど、及川、女関係大人しいじゃない?」
残念そうに顔を歪めた玲奈に言われて頷く。
「一年くらい前からね。理由は知らないけど、確かに大人しいよね」
「二週間くらい前に本店で為替関係のオペレーター研修あったでしょ? 華は来てなかったけど、行ったらたまたま小田もいて、そんな話になって。
男同士ならそういう話もするだろうしと思って聞いてみたら、なんがグダグダ言っててね」
「グダグダ?」
「及川、はっきりは言わなかったらしいけど、気になる子みたいなのはいるみたいだったって。
なんか、女遊びやめたくらいから、小田にもそういう話しなくなっちゃたみたいで」
「そうなんだ。小田くんと仲良さそうなのにね」
現に、今まで及川のそういう話を同期にリークしていたのは小田くんだった。
ああ、でもだったら小田くんに言わなくなっても当然な気もするけれど、と思っていると、玲奈が続ける。