囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「いいよ、慣れてるし。私のために一生懸命になってくれてるのは分かるから。
それに、私だっていつまでもずっと片思いしてるのも嫌だし、いい加減吹っ切れないとね」
明るく言ったのにまだしょげた顔をしている玲奈に、笑って背中を叩く。
「それより玲奈にはそういう話ないの? 先月言ってたじゃない。ジムのインストラクターに番号とアドレス渡されたって」
「えー……私の話はよくない? 私自分の話より人の話聞く方が好きなんだけど……あ、そうだ。アドレス!」
顔をしかめていた玲奈が急に声の音量を上げるから少し驚いていると。
玲奈は眉を寄せながら言う。
「及川から、アドレス渡されたでしょ? なんか、小田の支店の先輩が華を見て気に入ったらしくて、アドレス渡して欲しいって小田に頼まれたの。
でも、私は華の気持ち知ってたし、そんなことできないからどうしてもっていうなら自分で渡してって言ったんだけど……さっき聞いたら、結局、及川経由で渡したとか言われて。
仕方ないにしても、及川からなんてことになっちゃって、ごめん」
顔の前で両手を合わせる玲奈に、首を傾げる。
「アドレス……なんて渡された覚えないけど……」
「え……でも小田はさっき聞いたら及川に渡したって言ってたよ。あれ、じゃあ及川がまだ持ってるのかな……。でも、毎日会うのにおかしくない?」
同じように首を傾げた玲奈としばらく顔を合わせていたけれど、考えても答えがでるわけでもないから「まぁ、いいや」と切り上げる。
「渡しそびれてるのかもしれないし、あとで聞いとく」
「んー、なんかごめんね」
「なんで? 玲奈悪くないじゃない」
笑ったところで、「料理すごい来てるから戻れー」と小田くんが呼びに来てくれたから大人しく店内に戻って。
そこからは、上司の愚痴や玲奈の新しい彼氏の話題であっという間に時間が過ぎて行った。