囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
駅まで行けばタクシー乗り場もあるし、その時の状況で判断すればいい。
他の同期は二次会に移るらしいから、例え私の家が小田くんの部屋から遠くても、恐らく一次会で帰る予定だった私が小田くんを送っていく事になったんだろうなと、諦めてため息を落とす。
それにしたって小田くん、こんな酔うなんて珍しいな。
いつもキープして上手に飲んで、どちらかと言うと酔っ払いの面倒を見る側の人なのに。
何かあったのかな、でも飲み会の最中はそんな様子なかったし、むしろ元気だったのに。
そんな事を思いながら、よろよろと歩く小田くんの腕をがっしりと掴みながら歩く。
飲んでいたお店から駅までは普通に歩いて十分くらいだから、小田くんを支えながらだと二十分ってところだろうか。
大通りに面していたお店だったおかげで、駅までの道は一本で分かりやすい上に道が明るくて助かる。
「小田くん、気分悪くなったりしたら言ってね」
横顔を見上げながら言うと、小田くんはへにゃりとした笑顔を浮かべて「おー……悪いな、深月」と口にした。
顔も口調もへらへらしてはいるけれど、私の事も誰だか分かってるみたいだし、今の状況も分かっているようだ、と少し安心する。
気分も悪くなさそうだし、支えていればそれなりに歩いてくれる。この調子なら電車で帰れるかもしれない。
そう判断してホッと胸を撫で下ろしながら歩いていた時。
「彼女とさ、ちょっと喧嘩しちゃってさー……」と、隣から聞こえてきた。
見れば、さっきまでヘラヘラしていた小田くんが一転、泣き出しそうに眉を寄せていた。
片側二車線の車道を、車が次々に走って行く。
もう二十二時前だっていうのに、車の波はまだまだ途絶える事がなさそうだった。