囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
及川がなんでこんな事を言うのかが分からない。
私が、あの日、せっかくなかった事にしようとした時にわざわざ否定した理由も。
大崎くんの事にこだわる理由も。
本気の恋だとか、そんなのをやたらと話題に出してくる理由も……今、そんな目で、真剣に見つめてくる理由も。
全部が、分からない。
「……かもね」
泣きそうになるのを堪えて作った、口元だけの笑み。
俯きながら吐き出すようにそれだけ言うと、途端、腕を引かれ歩かされる。
「え……っ、及川……?!」
数メートル歩いた先にある、その建物。
そこにためらうわけでもなく入ってしまう及川に、驚きながらも抵抗してはみたけど、敵うハズがない。
入口からすぐの場所にある液晶パネルから及川が適当な部屋を選ぶと、カシャン……という音と一緒に何かが落ちてきて、その音に肩が揺れる。
取り出し口から及川が取りだした鍵を見て、心臓がギクリと音を立てた。
どういうつもり……? からかってる? 一度しちゃったんだし、もう二度も三度も同じだとか、そういうこと……?
まとまらない考えが、頭の中でぐるぐると目まぐるしく回る。
エレベーターに乗っている間も、部屋につくまでも、何度か呼びかけてはみたけど。
及川は私の方なんて一切見ず、ただ前を見ているだけで何も答えてくれない。
腕を掴む及川の手が、熱かった。