囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
部屋に入った途端だった。及川が私を壁に押さえつけたのは。
「ちょっと……っ、及川っ!」
両手をそれぞれ顔の横で押さえる力の強さに、動揺しながらも睨みつける。
じっと見上げていると、及川は納得いかないとでも言いたそうな顔で、ようやく口を開いた。
「元彼にだって誘われたら触らせるんだろ? だったら俺だっていいじゃん」
確かに、さっきそういう返事をしたし、そういう女だって及川に言ってきたのは私だ。
酔って、誰かと朝まで過ごしちゃうことなんて初めてじゃないって。
だから、あの夜の事なんて気にする必要ないんだからって、及川にそう言いたくて。
及川に、気を使わせたりしたくなかったから。
だけど――。
「嫌……っ、んっ……ぅ」
本当はそんな女じゃなくて。
気持ちが通じていない相手とこんな事、できる女じゃない。
無理やり合わせられた唇に嫌悪感なんてないけど……素直に受け入れる事はできなかった。
私は及川が好きだから。
ずっと好きだったから、キスされるのだって触られるのだって嬉しい。
嬉しいけど……でもそれはその一瞬だけで。時間が経つごとにそれは見事なまでに姿を変え、私に刃を向ける事を知っているから。
もう、あの夜で知ってしまってるから……。
だから、キスも身体も欲しくなかった。