囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「ふ、ぅ……んっ」
顎にかかった指に強引に唇を割られ、そこに及川の舌が入り込むと、一気にあの夜の事が頭いっぱいに思い出されてきて……。
堪らなくなって涙が溢れる。
そんな私に気付いた及川は、キスを中断して離れた。
でも、抑えた手はそのままに私を見つめていた。
いつもは余裕を浮かべている顔が、苦しそうにしかめられていて驚いたけど。
「なんだよ……なんで、他の男はよくて、俺はダメなんだよ……っ」
絞り出したみたいな声で問われた言葉に、もっと驚いた。
驚いたし……もう、誤魔化せないとも思って、涙が筋を作って頬を流れ落ちる。
こんな風に至近距離から懇願するみたいに問われてしまえばもう……私だって、嘘つけない。
「なんでって……決まってるじゃない……」
同期の関係を壊すのが嫌だったから、及川に変な気を使わせるのが嫌だったから……だから、必死に笑ってたのに。
なんで執拗に、そんなに必死な顔して、私の本当の気持ちを掘り起こすの?
及川のせいで……全部が、台無しだ。
私が一生懸命ついた嘘も、痛い思いをしながら隠してきた気持ちも、必死に繋いでいた同期って関係も、全部が。
もう、全部が、終わってしまう――。
目の前の及川をじっと見上げる。
涙で滲む視界の先、私を見つめる及川にゆっくりと口を開いた。
「そんなの、及川が好きだからに決まってるでしょ……?」