四周年記念小説
好きだからこそ
焦っては駄目だ。

「…………」

四浦は黙ったままだ。

『満彦』

今度はゆっくりと呼んだ。

「悪い、
....
好きなヤツに当分
会えなくなると思ったら
抑え切れなくなった……」

は? はぁぁぁ!?

声に出そうなのを抑えて
心の中で思いっきり叫んだ。

俺の聞き違いじゃなければ
四浦は確かに
[好きなヤツ]って言ったよな……

今の今まで、
そんな素振りは
見せなかたはずだ。

家と学校での違いなんて
呼び方くらいで他は
何も変わっていない。

【四浦】と呼び捨てなのも
ため口なのも何も変わっていない。

『何を言い出すんだよ』

動揺と嬉しさを隠したまま
引っ剥がした。

四浦は何も答えたない。

早く行かないと桜耶が
玄関に来てしまうかもしれない。

『はぁ~
兎に角、中に入れてくれ』


「そぉだな。悪い」

リビングに行くと
桜耶が走って来た。

「マサ兄ちゃん」

この笑顔も当分見られないのか……

寂しいな。

『宿題は終わったか?』

四浦が教師だからか、
宿題は夕飯前に
終わらせるようにさせている。

「うん‼ 今日はね
パパがちょとだけ手伝ってくれたの」

へぇ~

珍しいこともあるんだな。

チラっと四浦をみやる。

聞こえてるのやら
聞こえてないのやら
四浦は何も言わない。

桜耶をリビングに残し、
二人で夕飯の準備を始める。

『なぁ、満彦
さっき言ったこと本気か?』

子どもがいる所で
する話じゃないが
今訊かなきゃ
ずっと訊けないままになる。

「あぁ、本気だ」

調理する手を止めて、
四浦が俺と向き合った。

「本当は今すぐ
お前と桜耶を連れて
海外移住したいくらいだ。
ルクセンブルクとかデンマークとかな」

同性婚が認められてる国を
挙げ、真剣な目で見据えられ
目を反らせなくなった。

[好き]のレベルが[結婚]したいくらい
大規模だったわけか……

まさか其処まで
思われてるとは思いもしなかった。

『なぁ、満彦、
それは俺と結婚するつもりなんだよな?』

目を見れば、そんなこと
訊くまでもないが確かめたかった。
< 5 / 18 >

この作品をシェア

pagetop