キミが愛しいと気付いたからで
俺たち剣道部の伝統。
夏の大会で引退した先輩達と最後の練習をした後、学校の校庭でBBQを行い、夜に校内での肝試し大会が行われる。
BBQの食材やらは部員の親が持ち寄り、親も参加なので問題が起きようとも大袈裟な話にはならない。
“自分の子供くらい、自分で見ろ”
“自分の子供の不始末は親が責任を負え”
学校側と保護者との暗黙のルール、なんだろう。
『悠斗!』
名を呼ばれ、振り返ると、そこには新しく副部長として任命された、佐伯が立っていた。
『何?』
先程の美嘉先輩との会話を思い出し、若干イラつく気持ちを抑え、佐伯に問いかける。
『俺、今日美嘉先輩に告白しようと思う。
美嘉先輩から今日の肝試し大会のペアになってくれないかって誘われてさ。
今日が最後のチャンスだと思うんだ』
満面の笑みの中に見せる真剣な瞳。
こいつも俺同様に美嘉先輩目当てで剣道部に入部した。
俺も佐伯もド素人だったけど、先輩にアピールするが故に努力した結果が部長と副部長。
『良かったな』
そう答えながらも内心では全くそんなこと思ってない。