キミが愛しいと気付いたからで
佐伯が美嘉先輩を好きなのは、俺も知ってた。
けど、佐伯が美嘉先輩を想う気持ちよりも俺が美嘉先輩を想う気持ちの方が強いって、深いって、そう思ってた。
でも美嘉先輩は佐伯を肝試しのペアに選んだ。
俺と佐伯の違いは、何?
『勝ち負けなんて、もう決まってるって。
佐伯は美嘉先輩に誘ってもらったんだ、俺より上手くいく可能性はあるだろ』
俺はそれだけ言って佐伯に背を向ける。
『けど、美嘉先輩は多分…』
『悠斗!』
佐伯の言葉を遮るように、俺の名を呼びながら登場する美姫先輩。
『美嘉から聞いた?
練習終えたら、体育館裏だからね!』
美姫先輩は目を輝かせながら、ぐいぐいと俺に近寄り話してくる。
『美姫先輩、なんの話すか?
内容によってはすぐ答えられると思いますけど、俺…』
『も~!乙女心を分かってないわ~!
私が来てって頼んだんだから、絶対来てよ!』
美姫先輩はそう言って、ニッコリ微笑むと踵を返して、俺から離れていく。
『相変わらず、美姫先輩は押しが強いのな』
佐伯に同感。
『悠斗、頑張れ』
“なんの励まし?”と思いつつ、短く“あぁ”と返事を出す俺。
静かにその場を離れる。
もちろん練習後の体育館裏にだって行かなかった。
それが美姫先輩への返事のつもりだった。