強引な彼との社内恋愛事情*2
「うあ。失速」と、眠そうな眼をこする谷くんがフロアにいた。
時計を見ると深夜の1時。定時間際、急な設計からの修正確認依頼が来てしまった為、私と広重と谷くんというメンバーで対応することになった。
同じ手順を何千回とこなし、こんな時間。さすがに眠くなる。
失速宣言をした谷くんは「ちょっと消えます」と、息抜きにフロアを出て行った。
僅かな沈黙のあと、「仮眠室で一緒に寝ませんか?」と涼しい顔で広重がいうものだから、思い切り睨んだ。
「冗談ですよ。ていうか、誰も聞いてないんだから、怒らないでください。そんなに嫌でした?」
「広重あと何回?」
「あと二千三百回かな」と言ったあと、「あっ」とスマホを見て固まった。
「ん?」
顔を上げると、広重が席を立っていて、「千花さん、出ちゃいましたよ」と、わたしを手招いた。もしかして修正したはずの不具合が発生してしまったのかと嫌な予感が胸をかすめた。