強引な彼との社内恋愛事情*2
「千花さん、今のナンパですか?」と、私の顔を見るなり広重が言った。
「あ。うん。断ったから、大丈夫」
「まじですか?嫌なこと言われませんでした?俺、文句言ってきます」と、あとを追いそうになったから、慌てて止めた。
「恥ずかしいから、よしてよ」
「だって、千花さんに」
「なんもされてない。話しただけ」
「本当に?」と、深い溜息を吐いた。安心したみいに。
「千花さん、ひとりで歩かせたら、なにが起きるかわかったもんじゃないからな」
「大袈裟」
「でも、やっと2人きりになれましたね」と、笑ってくれた。
良かった。この勢いで、あれが、私の元彼だと知ったら、広重は本当に殴ってしまうだろうな、と思う。
変な噂を流しやがってとか、きっとそういうこと、全部、私の代わりにぶつけてくれるんだろうな、と思う。
人のことを思って怒るって、すごい。
そんなことが想像できるから、嬉しい。
そうだ。過去のことだ。
赦せないって思ったけど、そんな広重と出逢えたのだから、赦そう。私の中でちゃんと処分しよう。
一瞬だけ、過去を見てしまったけど、今の私のことではないのだから。
もう関係ないんだ。