強引な彼との社内恋愛事情*2
夏の、お誘い
「ちょっと広重くん」と、谷くんが言ってた。
時計の針は、すでに22時を過ぎていた。社内のフロアには、まだ数人残っている。
「2389の修正確認依頼きたんだけどさ、1回しか発生してないんだよね?」
「2389」と呟いて、キーボードを叩く。
「ああ。これか。これ、発生率1000分の1ですよ」
「マジで?広重くん変わってよー」
「俺、今、負荷試験の途中ですから」
「これ、広重があげたやつだよね?ていうか、広重って、なんか発生しにくいやつばっかあげるよねー。ていうことは、これでお盆休みがなかったら、広重のせいってことになるよね」
「なりませんよ。谷さんだって、この前すっごい面倒くさい手順のあげてたじゃないですか。あれ、確認するの本当に大変でしたからね。鈴元さんと一緒にやりましたけど大分ご乱心でしたよ」
そんな冗談を言い合ってる2人の後ろに立って、ごほんと咳払いをした。