強引な彼との社内恋愛事情*2
夕方に近づき、準備をしようと浴衣を広げた。
「千花さん、この浴衣着るんですね?」と、広重がニコニコしている。
「うん」
「楽しみ。写真いっぱい撮りましょうね」
「そうね」
着付けをしようとしてるのに、なかなか出て行こうとしない広重を無理矢理閉め出すと、「着替えくらい、いいじゃないですか」とすねた声が返された。
「邪魔しないでくれる?」
「……はい」
また可愛くないこと言ってしまったと後悔したけど、広重は、気にするそぶりもなくて。
浴衣に着替えた私を見て、「千花さん、やばい」と言って甘く抱きしめた。
「やばいって、大袈裟だってば」
「まじで参りました」と、私のおでこにキスをした。
なんの勝負もしていないのに、参ったってなんなの。
笑いたいけど、恥ずかしくて、目を逸らしてしまう。
広重って犬みたい。素直で懐っこい。今に始まったことじゃないけど。
私が嬉しくなる言葉を、こんなに自然と言ってくれるから、嬉しくて、可愛くて仕方なくなる。