強引な彼との社内恋愛事情*2
誰にも会わないといいなって、思いながら、花火大会の会場に向かった。
車は混むから、バスと電車を乗り継いで。
花火大会の場所は、隣の市にある海沿いだった。
本来なら、海のほうに行くはずなのに、「なんか食べます?」と、駅前の出店でジュースや焼きそばを買ってから、足は反対方向へと向かった。
「待って。広重、どこ行くの?」
「穴場があるから」と、笑って言った。
そう言えば、この花火大会とは、准一と一緒に来たことがあったな、と、少しすたれた駅前の商店街が見えて思い出した。
なんとなく歩いたことがあるような感覚がさっきからするのはそのせいだ。
それを抜けて、石畳の階段を上がって行く。
「どこ?」と、言うと、「上に神社があるんです」と言った。
ぼんやりと照らす灯りしかなくて、恐いと思って、広重の腕を掴んでしまった。それを見て、「大丈夫ですよ」と、広重は笑う。
「別に恐いわけじゃないし」
訊かれてないのに、自分から墓穴を掘った。だから、また笑われてしまった。