強引な彼との社内恋愛事情*2
空にまた静寂が戻った。
「綺麗だったね。終わると、なんか寂しい」
「花火でもして帰ります?」
「それもなんか違うかな」と言って、立ち上がった。
「電車、混みますよね」
「早めにでれば良かったかな」と、階段を下りて、駅に向かっていた。
「でも、来れて良かったです」
「ふふ」
「同じ家に帰れるっていいですね」と言った。
うん。本当だ。別れ際は、いつも寂しいから。
改札で定期を当てると、エラー音が鳴ってしまった。
広重は、もう改札を抜けている。どうしたの?という顔で、私を見ていた。
「ごめん。チャージしてなかったみたい」
ばつ悪く笑って、早足でチャージをしに行った。
巾着を広げて財布をだす。開けた瞬間、小銭がチャリンと転がっていった。
財布が開いてたなんて、最悪。広重、待ってるのに。
拾おうとして屈むと、手が伸びて変わりに拾われた。
「あ。すみません」と、顔をあげると、驚いた准一の顔があった。