強引な彼との社内恋愛事情*2

「メール、読んだ?」


「メール?」


「この前、送ったんだけど」


「見てないよ。届いてないんじゃないのかな?」


腑に落ちないのか、眉根を寄せて、私を見た。


せめてもの嘘をつきたい。君に、未練はないって、そのくらい伝えてやりたい。


どうにもできない過去を。思い出をくれた人だから。


せめて、そのくらい、いいだろうと思う。


「そっか。なんか、あれから、千花のこと気になってさ。どうしてるかな?と思ってメールしたんだ。エラーにもならなかったから、てっきり送られたものだと思ってた。届いてなかったんだ」


「うん」


「アドレス変えた?」


「うん。確か」


「迷惑だった?」と、訊くから、一瞬答えに迷った。


だけど、「うん」って言えた。


「だよな」と、笑った。


だって、結婚してるじゃん。そういうことに、私を巻き込まないでよ。


本当に。


無神経な男だと思う。


でも、好きだった。あの頃。本当に。終わり方は、最低だったけど。


恋、だったな。


だけど、もう一度、この人と恋ができると言われても、私は二度としたくないけれど。
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