強引な彼との社内恋愛事情*2
「あ」
「誰?」と、明らかに不振そうな顔で見る。
彼と会うのは、二度目だろう。だけど、この前、一度会っているということはお互い気づいていないみたいだ。
准一を目の前にして、ナンパなんて言い訳はさすがにできなくて、「前、会社にいた人」と、紹介した。
変な男に絡まれてるわけじゃないってわかったせいか、少しばかり安堵した様子で会釈をした。
「彼氏?」と、准一は訊いた。
あ、どうしよう。答えに迷った。
代わりに、広重が「はい」と言った。
たぶん、私は困った顔をしたんだろう。
広重を見たら、一瞬だけ目があって、少し哀しげに見えたから。
「そっか。だよな」と、笑って、「じゃあ。元気でな」と言って去って行った。
たぶん、准一から、連絡がくることはないだろうと思った。
そんな男じゃない。
またね、は、きっとない。