強引な彼との社内恋愛事情*2
締め切っていたせいで、家の中は、蒸し暑かった。
「やばいね。これ」と、テレビのリモコンを手にした。
あまりテレビは観ないのに、今は、私たち以外の声が欲しかったから、いちばんに。広重が、クーラーの電源をオンにする。
「千花さん」
「広重、先にシャワー浴びて来てもいいよ?」
喉、渇いたね。本当に。と、キッチンに行こうとしたその肩を掴まれた。
「訊いてもいい?」
「ん?」
「さっきの、元彼でしょ?」
「え…」と言いながら、目をあわせられず、「千花さん、わかりやすいよ」と、笑った。
「うん。元彼」
「同じ会社だったって言うから、ピンときたんだけど」
「うん。前に話したことあるでしょ?最低な別れ方をした最低な元彼氏だよ」
そう言ったら、「ずるいなぁ」と言った。
「えっ?」
「千花さんに、そんな顔させるんだもん」
「そんな顔?」
「別れたのに、なんだかんだ、まだ心にいませんか?」