強引な彼との社内恋愛事情*2
広重を前に、店内に入ると、急に彼は立ち止まった。
どうしたんだろう、と思うと、テーブルに向かい合っている谷くんと水谷さんの姿があった。
え?
さっと、谷くんが手を挙げて、「広重」と呼ぶ。
あ。しっかりしないといけない。広重の顔を伺ってしまっていた自分に気がついた。
いつものように、しないと。
「あ。谷さんと水谷っち?」
「なに?2人?」
「ええ。まあ」
「丁度良かった。2人じゃ寂しいから誰か呼ぼうかとか言ってたとこ。遠山さんもどうですか?」と、谷くんは言った。
広重が、振り返って私を見るから、「いいよ」と言った。
それこそ、断るなんて選択はない気がするし。
「さっき、帰り際にめぐめぐに偶然会ってさ。飯誘ったの」と、谷くんが言う。
こっちも、適当に話を合わせて、なるべく怪しまれないように、とばかり気にしてしまう。
付き合ってるわけじゃないように言うけど、実際のところ、どうなんだろう?
少し疑ってしまう私もいるのだから、あっちから見ても同じかもしれない。
取り敢えず、お互い深く、追求することもないのは、そのせいかもしれない。