強引な彼との社内恋愛事情*2
家に帰ってからすぐに広重に電話をした。
「もしもし」
「あ。千花さん」
「家、着いた?」
「うん。千花さんも?」
「うん」
「今日、ごめんなさい」と、私が訊く前に広重は謝った。
「谷くんのこと?」
「うん」
「なにがあったの?」
「実は」と、少し言い辛そうだ。だから、余計に気になる。
「谷さんに、千花さんと付き合ってどのくらいなの?って言われて」
「はっ?」
「唐突に訊くものだから、びっくりして」
「まあね」
今、言われた私が、たぶん、いちばん緊張してる気がする。
嫌な汗が手にじんわりかいているのが分かった。
ああ。嫌だ。
あの子に、准一のことで文句を言われたときの光景が目に浮かぶ。
あの子よりも、恐かったのは、助けもせず、私が悪いと決めつけた、周りの人の白い目だった。
いやに心臓の音が大きくなった気がした。