強引な彼との社内恋愛事情*2
「なに言ってんすかーとか笑って誤魔化してたんですけど。ちょっとしつこかったっていうか。それで、ちょっと、かっとなってしまったというか」
「そうなんだ」
「ごめんなさい。この前のこともあったから、噂になってたりしてたのかなって、気が少し動転してしまいました」
「ううん。いいよ。大丈夫」と、明るく言うと、少し安心したみたいに笑った。
「気になりますよね?」
「まあ、一緒にいたから疑いたくなっただけかもよ?」
「ですかね?」
「大丈夫だよ。じゃあ、もう寝るね」
「うん」
「明日」
「うん、明日」
「あ。広重」と、呼び止めると、彼の背後の世界の音がよく聞こえた。
きっとテレビの音だろう。ニュースかなにか読み上げてる感じ。
それから、ふうとした息遣いが伝わる。触れたように感じる。手を伸ばしても届かないところにいるのに。
そう思うとひどく寂しい。
実際、こうして伝わってくると思うけれど、想像の中の彼しかいなくて、全てが間違っているかもしれない。
それでも想像は止まらない。
広重もそうなのだろうか。