強引な彼との社内恋愛事情*2
◇
金曜日、仕事が終わって、水谷さんの家に行った。
コンビニで夕食を買って。
女の子の家に遊びに行くのって、久しぶりかもしれない。
なれないからか、あまり会話が弾まないけど。
「じゃあ、お願いします」と、言って、タオルが敷かれたテーブルの上に腕を乗せて指を広げる。
手際よく、やすりで削りだす。少しくすぐったかった。
「試しにひとつだけ、塗ってもいいですか?」
と、言うから頷く。
どうやら、色は赤と決まっているらしい。
爪にすっと、赤が伸びた。
「なんか、赤って塗るの難しそう」と、呟く。
「ごまかしにくいですよね」
「ね。でも、水谷さんって、器用だから簡単じゃない?」
「え?」
「料理とか。バーベキューのとき、包丁さばきがすごかったもん」
「そんなことないですよ」
「私、料理もネイルもしないことはないけど、得意とも言えないからなんか羨ましいけどな」
「そんなことないですよ」