強引な彼との社内恋愛事情*2



金曜日、仕事が終わって、水谷さんの家に行った。


コンビニで夕食を買って。


女の子の家に遊びに行くのって、久しぶりかもしれない。


なれないからか、あまり会話が弾まないけど。


「じゃあ、お願いします」と、言って、タオルが敷かれたテーブルの上に腕を乗せて指を広げる。


手際よく、やすりで削りだす。少しくすぐったかった。


「試しにひとつだけ、塗ってもいいですか?」


と、言うから頷く。


どうやら、色は赤と決まっているらしい。


爪にすっと、赤が伸びた。


「なんか、赤って塗るの難しそう」と、呟く。


「ごまかしにくいですよね」


「ね。でも、水谷さんって、器用だから簡単じゃない?」


「え?」


「料理とか。バーベキューのとき、包丁さばきがすごかったもん」


「そんなことないですよ」


「私、料理もネイルもしないことはないけど、得意とも言えないからなんか羨ましいけどな」


「そんなことないですよ」

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