強引な彼との社内恋愛事情*2
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試験当日。会場は、専門学校だった。受付をすませて、席に着くと、周りの緊張感が伝わってくる。
ただ、座っているだけなのに。
ハンドモデルは実技のみ必要で、実技のあとに筆記試験が行われる。
だから、先に帰ることにした。
御礼に奢ると、水谷さんは何度も言ってきたけど、断って、試験が終わると広重の家に真っ直ぐ向かった。
今日は泊まる約束をしていた。
「千花さん。お帰りなさい」と、広重は迎えいれた。
「ただいま」
「爪、凄いね」と、赤さに驚かれた。
「目立つ?」
「目立つけど。なんか似合う」と、私を引き入れた。
「なんかいい匂い」
部屋の中に広がるのは、シチューの香りだ。
「たまには、なんか作ろうかなって思って、煮込んでました」
料理あんましないから、レパートリーなくて、と笑った。