強引な彼との社内恋愛事情*2



試験当日。会場は、専門学校だった。受付をすませて、席に着くと、周りの緊張感が伝わってくる。


ただ、座っているだけなのに。


ハンドモデルは実技のみ必要で、実技のあとに筆記試験が行われる。


だから、先に帰ることにした。


御礼に奢ると、水谷さんは何度も言ってきたけど、断って、試験が終わると広重の家に真っ直ぐ向かった。


今日は泊まる約束をしていた。


「千花さん。お帰りなさい」と、広重は迎えいれた。


「ただいま」


「爪、凄いね」と、赤さに驚かれた。


「目立つ?」


「目立つけど。なんか似合う」と、私を引き入れた。


「なんかいい匂い」


部屋の中に広がるのは、シチューの香りだ。


「たまには、なんか作ろうかなって思って、煮込んでました」


料理あんましないから、レパートリーなくて、と笑った。
< 196 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop