強引な彼との社内恋愛事情*2

「あれ。遠山さんひとりですか?」


「私以外に人が見える?」


「遠山さんの後ろに血の気のない顔のおっさんが」


「幽霊?しかもおっさんって」


「マネージャーの生き霊」


「そんなこと言ったら、祟られるわよ」


「あ。村上来なかったですか?」


「来てないけど」


「もしや、便所こもり隊か」と呟いた。


「なにそれ」


「あ、そういえば。遠山さん、イブ来ないんですか?」


「えっ?」


「村上を盛り上げなきゃいけないクリスマス会という名の呑み会」


「ああ。谷くんも行くんだ。私は行かないけど。誘われてないし」


「誘われてないのに、なんで知ってるんですか?」と、言われ、自分の失態に気づいてしまう。


村上くんとプライベートな話はしないのだから、知ってるのはおかしいと言えばおかしいのだ。


「顔、赤らめないでくださいよ。可愛いですね」


「う……噂で聞いたの」


心苦しい言い訳なんか、通じるわけもなく。


「広重と俺は被害者ですからね」と、言われてしまった。


だけど、誰もいないからって、ここで広重の名前をださないでほしい。
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