強引な彼との社内恋愛事情*2

異動は仕方ないけど、千花さんの口から訊きたかった、と言う。


田原さんが知ってるのもわかるんだけど、田原さんの口からは、正直、訊きたくなかったとも。


「ごめん。休みの日にちゃんと言おうと思ってたの」


「そう思ってた?」


「うん」


「ならいいけど。すごいびっくりしたし。あと、がっかりもした」


「……ごめん。言いたかったんだけど。ちゃんと決まってもなかったから、言えなくて」


「ごめんなさい。責めてるわけじゃないです」


「ううん。ごめん」


「いいよ。でも、本社か。なんか変なヅラ親父がいるとか聞いたけど、大丈夫ですか?」


「あ。やっぱり、有名なんだ。大丈夫だよ。厳しいとかセクハラするとか噂あるけど、本当かわかんないし。まあセクハラは私にはしないでしょ」


そう言って、笑うと、「千花さんって、鈍感なんですよ」と、言った。


「え?」


「なんか、そんな気がするから、不安」


「そう?」


「モテないとか言うけど、実際そうでもないでしょ」と、言って、テーブルの上に置いていた名刺をひっくり返した。
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