強引な彼との社内恋愛事情*2
「イブの広重、恐かったんですもん」
だから、広重って軽く口に出さないでほしい。
「ふうん」
反応に困り興味がない顔をして相槌だけ打つ。
「遠山さんに、好きって言ったのか?みたいな感じで、こうですよ」と、自分の襟元を引っ張った。
「え?」
「遠山さん、俺の冗談をあいつに言わないでくださいよ。まあ、俺が悪いんすかね。怒られるとは」と、笑いながら、エレベーターをおりた。
ピッとセキュリティの解除をする。
フロアには、誰もいなかった。
谷くんはデスクに向かうと、引き出しを開けて、「あった」と、安堵する。
「……ねえ、谷くん」
「はい?」
「さっき、言ったこと本当?広重が怒ってたって」
「ああ。本当ですよ」
「それだけで?」
「ええ。遠山さん、思われまくりですね。溺愛ってああいうこと言うんだろうなとか、思いました」
「溺愛って」
「あとで冗談だって言ってみたんですけど。あまり通じてないみたいだったなー。まあ今度、あいつに会ったら、謝ってください」
「送別会に戻ったら、いるじゃない」
「俺が言ったって、ダメなんですよ」と、笑った。