強引な彼との社内恋愛事情*2
◇
年が明けた。
初詣には、広重と一緒に近くの神社に行った。
手袋をした手を繋いで、鳥居をくぐる。
屋台が並んでいて、それだけで楽しい気持ちになる。
お賽銭を投げ入れて、手をあわせた。
今年も、広重と一緒にいれますように。
顔をあげると、広重が「なにお願いしたの?」と、訊く。
「異動のこと。ちゃんとやれるようにって」
「それだけ?」
「それだけじゃないよ」
「俺のこと、ちゃんとお願いしてくれました?」
「当たり前でしょ」と、言いながら、恥ずかしくなる。
広重は「よっしゃ」と、嬉しそうだった。
帰りに、大判焼きを半分にして、食べた。
「千花さんが、いなくなるなんて、嫌だな」と、広重は呟いた。
「私も、広重と会社で会えないかと思うと変な感じだよ」
「寂しい?」
「え?」
「寂しい?」
「えっと」
「会社でも会って、家でも会って、ちょっとうざかったからちょうどいいとか思ってません?」
「思ってないよ」
「なら、良かった」
本当に安心したように、残りを一口で食べた。