強引な彼との社内恋愛事情*2
寒さの中の、芽生え

年明けから、引き継ぎ業務の処理に追われていた。


来月から、本社に異動。


不安がないといったら、嘘だけど、やるしか道はないのだから、仕方ない。


そんなときだった。


水谷さんに、ハンドモデルになったお礼がしたいから、ご飯に、と誘われたのは。


何度か断ったものの、さすがに断りすぎかと悪い気分になり、就業後、近くのお好み焼き屋さんに向かった。


鉄板に油を広げると、水谷さんが手際よく、焼き始める。


この前、受けたネイル検定より上の級をまた受けると言って、笑った。


「そういえば、遠山さん。異動なんですよね?」と、お好み焼きを一口食べて、水谷さんは言った。


「あ。うん」


「びっくりしました。張本主任からちょっと訊いてたんですけど。来月からでしたっけ?」


「うん」


「でも、遠山さんなら、どこ行っても大丈夫ですもんね。なんか、寂しいですけど」


「水谷さんは、良く言いすぎだよ」


不思議なくらい過剰評価されている気がする。なにかある度、そう言われるから。

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