強引な彼との社内恋愛事情*2
ようやく、唇に力が入った。噛みしめた。それから、悟って理解した。
そっか。物珍しかったのか。今まで付き合ったことのないタイプの女と過ごすことがって。
異動になるから、丁度良かったって。別れやすいって。きっと、安心してたんだ。
「まあお世話になったし。送別会はしないとね」と、言って、水谷っちもおいでよーと広重は言った。
不快にさせるような軽い口調だった。
ひどい。なにそれ。意識がようやく、今になった。
手の震えがおさまった。それから、緑茶、呑み切らなきゃよかった。このまま、頭にかけてやりたかった、と思った。
実際あっても、できるわけないかと冷静になる。
隣の席にランチが届くと同時に、鞄とコートを手にして、レジへと向かった。
冬の冷たさが、切るように痛かった。