強引な彼との社内恋愛事情*2
凍える、心
「どうしよう」と、呟いてしまったのは、家のトイレの中だった。
遅れて、生理はやってきた。なんだ。良かった。妊娠してなかったんだ。
よくストレスで生理が遅れたり、なんてこともあるとも聞いたし、異動の話が少し自分にプレッシャーを与えていたといえば、嘘じゃないから。
なんとなく、腑に落ちた。
今日の午前中、産婦人科に行く予定だったけど、これで行かなくても妊娠はしていないことがわかる。
広重に、生理がきたって言わないと、と思うのに。スマホに手が伸ばせなかった。
もし妊娠してないって、わかったら、これでさよならになってしまうのだろうか。
きっと、妊娠なんかなかったら、異動を理由に、簡単に私を遠ざけるつもりでいたのだろうと想像ついてしまう。
妊娠していたとしても、うまいこと言って、堕胎をすすめて、別れるつもりだったのかな。
そう考えて、哀しくなって、またベッドに潜り込んだ。
午後に広重からメールが届いた。
[病院、行きましたか?]
[昨日、家で仕事してたら、寝坊しちゃった。来週行くよ]
[え?そんなに伸ばして大丈夫なの?]
[うん。大丈夫。寝不足だから、今日は一日寝てます]と、メールをそこで終わらせたくて、電源を切った。