強引な彼との社内恋愛事情*2

「え?」


「離れてみて、気づいたりしないの?」


「そんなことなにもありません。おまけにセクハラですよ?そんな質問は」


「はは。頑固だよな」


「頑固です」


「俺は、気づいたけどなー。素直だから」


「え?」


「嫁と飯のありがたさ」


「お……遅いですよ。というか、急にノロケとか言わないでください。驚きます」


田原さんは、少し笑った。


「つうかさ。遠山もさ、星野みたいに、他人のこと、気にせずに好きって言えるような奴になれよ」


「恋人ができたら、お伝えしますよ」


素っ気なく言うと、「頑固だから、信用出来ないな」と、言った。


少しして、田原さんが「ねみぃ」と大あくびをしたから、呑みにも行くことなく、ホームに向かった。


時間は丁度良かった。


見知らぬ人の中に紛れるせいだ。広重のことばかり考えてしまうのは。


きっと、今日呑んだビールのせいだ。


たまには、ちょっと、考えたくない。好きな人のことでも。そんな日だってあるのに。
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