強引な彼との社内恋愛事情*2
氷の中から、見つけたもの
仕事が忙しくて疲れたことを理由に、私は広重と会うことを避けていた。
素直になれないくせに、どうしたいかもわかんない。
気持ちを確認するのが怖くてズルズルと、嫌なことを先延ばしにして、誤魔化しているだけだ。
それなのに、急に前にいた支店に出向かわなくてはならなくなってしまったから、正直困っていた。
たぶん1時間くらいの滞在だ。きっと、広重はフロアにこもっているはずだからよっぽどのタイミングじゃなきゃ、会わないだろう。
そう思えば少しは心が軽くなった。
廊下では誰ともすれ違わなくて、ほっとした。
打ち合わせが終わった帰り際、ふと思い出したのは、田原さんがこの前の歓送迎会で言っていた、総務の水谷さんが、辞めるということだった。
挨拶くらいはしておこうかな。
じゃないと当分、こっちに来ることもそうそうないのだから。
ドアをノックすると、デスクに座っていた水谷さんとばっちり目があってしまった。