強引な彼との社内恋愛事情*2
「付き合い始めの頃かな。2人がお似合いに見えて。それでね。水谷さんのこと、ちょっと好きになれなかったんだ」
「え?え?えっと。すみません」
彼女は、しどろもどろになる。
「って、今はなにも思っていないから。ごめん。悪くないから、謝らないで」
「わ……私にこんなこと言ってもいいんですか?」
「こんなこと?」
「はい。2人が付き合ってる、とか。教えちゃっていいんですか?」
「知ってたんでしょ?」
「えっと……し、知らないです」
そう言うけど、明らかな動揺。だけど、どっちでも良かった。
知っていても。知らなくても。
「水谷さんなら、言ってもいいかなって」
本当。今、そう思えた。
「私なら?」
「うん。それだけ」
2杯目のグラスに口をつけると、「あの、遠山さん。私も言っていいですか?」と、真剣な面持ちで彼女は訊いた。