強引な彼との社内恋愛事情*2
「全然、気づきませんでした」
「お互い様ね」
近くにいた店員に3杯目を頼む。
だけどまさか、こんなところでカミングアウト話になるなんて、想像することもなかったから、この状況がおかしい。笑うしかないな、と思った。
「あの……谷さんから、聞いたんです。谷さん、すごく好きな元カノがいて。その人に、遠山さんが似てるとか。あと、遠山さんのこと好きになってたかもとか、そういうこと言ったとか」
なんか言ってた気がするけど、あまり覚えていなかった。確か広重がそのことで、怒ったとか、そういうことがあったっけ。
少し笑ったら、肯定と受け取ったのか「好きになったかもしれない、って、谷さん言ったんですね」と、しみじみ呟いた。
すごく切ない顔だった。
それに比べて、私はというと、「なんか言われたことあったかもしれない」と、曖昧すぎる寝ぼけたような答え方をしてしまった。
「そうですか」
「でも、誰にでも好きとかそんなこと冗談で言ってた気がするな」
「誰にでも」
ますます顔が暗くなってくるから、なぜか私が慌ててしまう。
変なことを言ってるつもりはないのだけれど、彼女にとってはマイナス的要素を含んだ言葉だったらしい。