強引な彼との社内恋愛事情*2
「私の中じゃ、いちばん好きに、違わない」
呟くと。
「千花さんは、いっつもずるいです」
と、言った。
「へ?」
「好きって言って、あっさり別れようって言って、なのに、振り返ったら泣いてるなんて」
下まぶたのふくらみにも、キスをする。チュッと軽く音がした。涙を吸い込もうとしてくれてるみたいだった。
「千花さんに、毎朝、こうしてキスしたら、好きって伝わりますかね?」
「毎朝、一緒にいれないじゃない」
「そうですけど……」と、キュッと指を絡めると、おでこにキスをした。
「てっきり、俺たちの子がいるのだとばかり思ってました」
「あ……ごめんね。早とちり」
「本当ですよ」
あーあ、と言った。残念そうに。
「結婚して、千花さんをひとり占めしたかったのに」
「いつだってしてるじゃん」
「そんなことない。俺だって、不安ですよ。千花さんに疲れたから会いたくないって言われただけで」
「ひとり占め、してるよ」
「どこがですか?」と、疑わしいのか、目を細めた。
「だって、私の心の中、広重しかいないよ?」
そうやって、ひとり占めしてるくせに、気が付かないんだね、と言ったら、目を丸くして、それから、優しく笑った。