強引な彼との社内恋愛事情*2



「広重の歴代彼女は何人いるんだろう」と、たまに考えることがある。


それは、もちろん、彼が初めて話した言葉を知りたいと思う気持ちと同じだ。


彼のことが、なんでもいいから知りたい。


ああ。恋してるんだな、って自分でも思う。


だけど、それと引き換えに私の話になるのが嫌だった。


歳のわりにあまりに少ない恋愛経験をさらけ出さなければいけないと思うと、訊くに訊けなかった。


それを知っていい気分になるわけでもないし。


「やっぱり、広重くんって遊んでたんだね」とほんわかした声が耳についた。


エレベーターの前。水谷さんが笑っていて、隣にいるのは、広重だった。


遊んでた?ってなに?


女の子と?……って、そんなの想像ついてた話だ。


昔は、昔。


この前、私を好きだと言ってくれた彼のことを思えば、そんなこと関係ない。


関係ないのに……。


単純に、またもや心に真っ黒なカーテンをかけられてしまう。
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