強引な彼との社内恋愛事情*2
話題はいつの間にか、社員旅行から、高校の修学旅行の話へと変わっていた。
水谷さんが、当時付き合ってた彼と夜抜け出して、先生に見つかりそうになったと言うと、「なにしてたの?」と広重が茶化す。
高校時代の明るい話、私にはないな、と思って口を挟まずにいた。
「広重くんだって、彼女とかと夜抜け出したりしなかった?」
「んーと」と、首を捻って、「まあ、ね」と濁した。
そりゃそうだよね。それなりに、淡い思い出を抱えてる。
私が極端に少ないだけで、そんなの普通だったりする。
居心地が悪くなり、「ごめん。先に行くね」と、早々に食べ終えて、席を立った。
「はーい」と、水谷さんの明るい返事だけ聞こえた。