強引な彼との社内恋愛事情*2
駅前のラーメン屋に行った。夕食時を過ぎたにも関わらず賑わっていた。
チャーシュー麺と、味噌ラーメンと餃子を頼む。
「俺、最近悩んでるんですよ」
深刻そうに言った。
「な、なに?」
「鈴元さんの前髪」
「ああ」
言わんとしていることがなんとなく伝わってきて、思わず笑った。
最近、髪を切ったのだけど前髪がそろっていて、私も気にはなっていた。
「あれ、うけ狙いですよね?ひどいですよ。見ないようにしようと思うんですけど、気づいたら見つめちゃうし。今日なんか無意識でシャッターボタン押下してましたからね。勘違いされそう」
「ははっ。バグ出なかった?」
「俺がフリーズしましたよ」
谷くんが話しやすいと思うのは、私のことをあまり知らないからだろう。気にしなくて済むことが多い。
話題だって、適当。目に映ったものを口にする感じが、いい。
あ。連絡くらいはしておくべきだったかな、と広重の顔が浮かんだ。
言わなかったら、浮気になるのだろうか。浮気って、どこから浮気なるのだろう。
「谷くんの彼女ってさ、会社の人とご飯とか行っても大丈夫なタイプ?」