強引な彼との社内恋愛事情*2
◇
「聞きました」と、広重に仏頂面で言われたのは、社員旅行の前日の夜だった。
「なにを?」
「この前、谷さんと食事に行ったんでしょ?」
「ああ。ラーメンに行った日?ごめん。言うの忘れてた」
「そうじゃなくて」
「ん?」
「誘われたりしませんでした?」
「はっ?」
「だから、谷さんに誘われたりとか」
なに言ってるんだろうって、可笑しくて笑ってしまった。
あれから谷くんの彼女の話を少し聞いて、また職場の話をして食べ終わったらすぐに解散した。
そんな色気のある展開になんてなることもなかった。
「なにが可笑しいんですか?」
「だって」
「俺、本気で訊いてるんですけど」
「谷くん彼女いるんだよ?私になんか興味あるはずないでしょ?」
「そんなこと関係ない」と言い切られる。
「なんで?」
「だって、現に彼女がいるのに、千花さんをご飯に誘う時点でどうかと思います」
「どうかって?」