強引な彼との社内恋愛事情*2
「はっ?」
言ってはいけないって、どこかで止める私がいるのに、抑えることができない。
「水谷さん、可愛いしね。私が男だったら付き合ってみたいかも」と、冗談を言って誤魔化すつもりだったのに、「なにそれ?」と本気で怒った顔になった。
「言ってみただけ。すぐムキになる」
「俺を疑ってるんですか?」
「疑ってるっていうか、広重だって、言ってることとやってることが違うって言いたいだけだよ」
「そんなことないですよ」
「じゃあ、無神経なんじゃない?」
「無神経?俺、なにかしましたか?」
急に強気に出てこられると、ああ、なんだろう。言葉って前に出てこなくなる。
「黙ってちゃわかりません」
自分だってそう思ってる。思っているのに。口が開かなくなった。さっきまでの勢いが嘘みたいだ。
言わなきゃと思う反面、なにから言っていいのか考えてしまう。ただ、言えなくなる。
わかってよ。って、ただ思ってしまうだけだ。
「もういいです」
冷たく言うと、私の部屋から彼は静かに出て行ってしまった。