死にたがりの私と 生きたがりの君
「私、楓のお母さんみたことない」
毎日病室に来てるのに。
「お母さん夜に仕事だから
美桜が学校行ってる間に来るんだ」
「お父さんは?」
「お父さんは実はここの院長さんで、
暇があれば様子見に来てくれる」
「えっ!院長さん!!?」
驚いて思わず立ち上がると、
膝の上に寝ていた楓が
床に転げ落ちる。
「オイっ痛えよ!」
床に思いきり頭をぶつけた楓が、
頭を押さえながら私を睨む。
「ご、ごめん!だってびっくりして………
楓ってお坊っちゃまなんだぁ……」
「お坊っ…………別に普通だよ」
「じゃあ将来は院長さん!?」
────あっ…………………。
言ってしまってからハッとする。
私………バカだ。
楓に"将来"の話するなんて………。
だって楓は………。
「なんつー顔してんだよ美桜
悪いこと言ったと思ってんの?」
「──う、うん……………」
「──俺さ、透析に慣れて
今みたいに透析後に
具合悪くならないようになったらさ
学校行けるよーになるんだ」
「えっ………?」
「そしたらさ、俺
めっちゃ勉強して院長継ぐんだ」
そう言った笑顔には
陰なんて全く無くて
未来にときめくように
瞳を輝かせていた。
「─楓なら
きっと叶うねっ」
同情じゃなくて、心からそう思った。
こんなに真っ直ぐ前を向く楓に
未来がないはずない。
そう、信じたかった。
「俺、頑張るよ」
「うん!絶対だよ?」
こんなに幸せなのに、
誰がこれを壊せるだろうか。
奇跡だって、起こして見せるよ。