死にたがりの私と 生きたがりの君



「私なんかむしろお荷物なんでしょ!!」





思わずそう叫ぶと、

唐突に柔らかく抱き締められた。




点滴で繋がれていた針が、
勢いよく抜けて、


その点滴跡で痣だらけの腕が
私を包みこむ。




突然のことで、
息をすることさえ忘れた。







「───死ぬのなんて怖くなかったんだ」







楓は熱い吐息を
切らしたままに呟いた。




「透析なんて最終手段だし
言い方を変えれば延命治療もいいとこだ。だから透析治療初めた日から、
死ぬのなんて覚悟してたよ」





最終手段………なんて………。





「もちろん生きたかったけど、
そのための努力なんか全くしないで
ただ促されるままに治療してた」





「だけど……そんな時
美桜に出逢った」






抱き締められているから、
表情は読めない。







「──あの日、死のうとしてた
美桜を目の当たりにして俺、
"死ぬのなんて怖くない"って
思えなくなった」




「だって、大切な人を亡くすんだ。
俺、あの時からもう美桜が大切だった。
まだ少し、この世界に居たいって
守ってやりたいって思えたんだ」




< 121 / 207 >

この作品をシェア

pagetop